極限環境での材料の限界に挑戦する: 機械システム材料工学
宇宙開発からナノスケールまで すべてが研究フィールドです
「熱から守る」 大気圏再突入用材料

熱可塑性樹脂含浸多孔質炭素アブレータの創成・評価
アブレータは人工衛星「はやぶさ」の帰還カプセルにも使われている熱防御材料です。多孔質内に含浸させた樹脂が高熱にて熱分解・気化して発生するガスを保護層として用いるのが熱防御システムのコンセプトです。材料工学の興味は保護ガスを適切に発生させられるような多孔質材料の設計にあります。
高い強度を持つ三次元網目構造に着目し,多孔質炭素材料を基材として選択。これに樹脂を含浸したアブレータの創成・大気圏再突入環境を再現したアーク風洞試験により評価しています。
「熱に耐える」 航空宇宙用耐熱材料

耐熱ハイエントロピー材料(多元素材料)の創成・評価
5種類以上の元素を等モル近傍で含む金属材料がハイエントロピー合金 (High Entropy Alloys: HEAs) です。結晶構造内に複数元素が混合することにより格子歪が導入され,特異な熱特性の発現が期待されることから,次世代の耐熱材料として期待されています。
HEAs の概念をセラミックスに応用した,耐熱多元素セラミックス (RMECs) は1800 ℃以上での酸化に伴う損耗を抑制を目指し,その創成・アーク風洞試験による評価を行っています。同じくハイエントロピー酸化物 (HEOs) では航空機エンジンのタービンブレードに用いる耐環境/熱遮蔽コーティングへの適応の可能性を切り開くべく,高温での振る舞いを評価しています。
「軽くて高強度」 航空宇宙用構造材料

酸化物セラミックス複合材料 (Oxide/Oxide) の創生・評価
セラミックス複合材料は,脆いセラミックスマトリックスを強い繊維で強化することで,高い強度を目指すコンセプトです。セラミックスの耐熱性や軽量であることを活かしつつ,セラミックスの特有の脆さを克服する可能性を秘めた次世代の耐熱材料です。
特に酸化物を用いた Oxide/Oxide 系セラミックス複合材料は,界面の強度を制御することにより,全体の強度を大幅に向上させられることが期待され,界面と強度の関係性の解明は急務となっています。これの作製・力学特性評価・組織評価を用い,より高強度な Oxide/Oxide の創成を目指します。
「デジタルツイン」 力学特性評価・解析

実験&構造を反映したデジタルツイン解析モデルでの評価
軽量・低熱伝導性が特徴である多孔質材料は,広い分野で構造材料への応用が期待されており,その力学特性の評価手法の確立が求められています。炭素多孔質材の一種であるカーボンモノリスは,樹脂・溶媒の相分離を利用して微細な孔を持つ材料となります。この微細構造に対して,その構造と力学特性の関係性を解明することは,強度が制御可能な軽量構造材料を設計可能になることになります。
この材料の実験的力学特性評価を元に,X線-CTを用いて作成した多孔質炭素の Image Based Modeling で構築したデジタル空間上の試験片(デジタルツイン)により,実験的アプローチのみに比べ詳細な力学特性評価を行うことを目指します。材料の力学特性の発現メカニズムの解明や応用に必要な性能を満たす材料設計指針の提案を行います。