Department of Materials Science and Technology
Faculty of Advanced Engineering
Tokyo University of Science
2023M-370 @ 公益財団法人JKA補助事業
計算熱力学を利用したSi系合金含浸による新規超高温耐熱材料の創成補助事業
(競輪の補助事業の助成を受けて実施しました)
大気圏内を音速の5倍(マッハ5)以上で飛行する極超音速旅客機の開発が
進められています。マッハ5以上で巡航する際に部材の一部は2000℃以上の
酸化雰囲気かつ動圧のかかる環境に曝されることから従来の耐熱材料は適用困難であると考えられています。本研究はJKAの助成を受けた多孔質材料の研究(※詳しくはこちら)の知見を基に行った新規耐熱材料の作製プロセスの確立及び評価について一部抜粋して紹介します。
計算熱力学を援用した材料プロセスの確立
※スポンジが水を吸うイメージです
〜多孔質材料への溶融含浸〜
次世代耐熱材料のプロセスとして多元系合金の反応溶融含浸による作製を提案しました。多孔質炭素材料の連続気孔に対して液体が毛細管現象により充填することを応用して,1750℃程度で溶融する耐熱合金を設計し,これを多孔質炭素基材に流し込みました。金属と炭素の反応により主に金属炭化物からなる多元素セラミックスが生成しました。2000℃酸化雰囲気での曝露試験では従来材料に対して5%以上損耗が抑制されました。詳細については現在論文等でまとめている途中であるため省略しますが,下記にいくつか実施にプロセスを確立する際に行った評価・解析を示します。
〜複雑組成をCALPHADで設計〜
5種類の金属から構成される材料を設計するために,計算状態図(CALPHAD)による組成の設計を行いました。
A, B及びCはそれぞれ元素または合金組成を表しており,灰色部分は1750℃における液相領域を示しています。1750℃で液相であることに加えて炭素と反応して耐熱セラミックスを形成すると予測される点を合金組成として設計しました。
※複雑な5元系を3成分で表現(擬三元系相図)
〜多元素からなる新規耐熱材料〜
設計した合金を設計上の溶融温度である1750℃で保 持すると溶融し,多孔質炭素基材中に含浸することがわかりました。また含浸後の合金は炭素と反応し,合金が残留していないことがわかった。残留合金が存在しないため,プロセス時よりも作製後の方が溶融温度が上昇していることを意味しており,CALPHADによる合金設計と溶融含浸を組み合わせたプロセスが耐熱材料のプロセスの1つとして有効であることが示されました。左図は作製後の材料の断面観察と元素分析の結果です。元素種は伏せているが全ての元素が概ね均一に分散し,耐熱セラミックスを形成できていることが明らかになりました。