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​極限環境での材料の限界に挑戦する: 機械システム材料工学
​宇宙開発からナノスケールまで すべてが研究フィールドです

カーボンモノリスアブレーター
「熱から守る」 大気圏再突入用材料

熱可塑性樹脂含浸多孔質炭素アブレータの創成・評価

アブレータは人工衛星「はやぶさ」の帰還カプセルにも使われている熱防御材料です。多孔質炭素(細かな穴の空いた炭素材)内に樹脂を含浸させたものを指します。

含浸させた樹脂が高熱にて熱分解・気化して発生するガスとなり,これが保護層として内部の温度上昇を防ぎます。材料プロセスの違いが,内部温度や損耗量に大きく影響していると考え,より良い材料を創生することに取り組んでいます。

​JAXA/ISAS の「惑星大気突入環境模擬装置(アーク風洞)」により,その損耗性能を評価します。

「熱に耐える」 航空宇宙用耐熱材料

耐熱ハイエントロピー材料​(多元素材料)の創成・評価

ハイエントロピー合金の概念図

5種類以上の元素を等モル近傍で含む金属材料がハイエントロピー合金 (High Entropy Alloys: HEAs) です。2004年にYehらにより提唱された新しい概念です。結晶構造内に複数元素が混合することにより格子歪が導入され,特異な熱特性の発現が期待されることから,次世代の耐熱材料として期待されています。

HEAs の概念を炭化/ホウ化物系セラミックスに応用した,耐熱複雑組成セラミックス (Refractory Compositionally Complex Ceramics: RCCCs) は 2000 ℃以上での酸化に伴う損耗を抑制を目指し,アーク風洞試験による評価を行っています。

多元素混合酸化物系セラミックスでは航空機エンジンのタービンブレードに用いる耐環境/熱遮蔽コーティングへの適応の可能性を切り開くべく,高温での振る舞いや熱伝導特性を評価しています。

2023年度JKA補助事業による成果はこちら(競輪の補助事業の助成を受けて実施しました)

合金の研究例: Clarification of phase stability and oxidation mechanism for TiZrHfTaX (X = Ta, Cr) using thermodynamic calculation

ホウ化物の研究例: Material design for TiZrHfNbTaBx: A boundary material of refractory high-entropy alloys and ceramics

炭化物の研究例: Hot-corrosion of refractory high-entropy ceramic matrix composites synthesized by alloy melt-infiltration

Al2O3/Al2O3の破断面
「軽くて高強度」 航空宇宙用構造材料

酸化物セラミックス複合材料 (Oxide/Oxide) の創生・評価

セラミックス複合材料は,脆いセラミックスマトリックスを強い繊維で強化することで,高い強度を目指す材料です。セラミックスの耐熱性や軽量であることを活かしつつ,セラミックスの特有の脆さを克服する可能性を秘めた次世代の耐熱材料です。

特に酸化物を用いた Oxide/Oxide 系セラミックス複合材料は,界面の強度を制御することにより,全体の強度を大幅に向上させられることが期待され,界面と強度の関係性の解明は急務となっています。​これの作製・力学特性評価・組織評価を用い,より高強度な Oxide/Oxide の創成を目指します。

「デジタルツイン」 力学特性評価・解析
力学特性コンター図

実験&構造を反映したデジタルツイン解析モデルでの評価

軽量・低熱伝導性が特徴である多孔質材料は,広い分野で構造材料への応用が期待されており,その力学特性の評価手法の確立が求められています。炭素多孔質材の一種であるカーボンモノリスは,樹脂・溶媒の相分離を利用して微細な孔を持つ材料となります。この微細構造に対して,その構造と力学特性の関係性を解明することは,強度が制御可能な軽量構造材料を設計可能になることになります。

この材料の実験的力学特性評価を元に,X線-CTを用いて作成した多孔質炭素のImage Based Modeling で構築したデジタル空間上の試験片(デジタルツイン)により,実験的アプローチのみに比べ詳細な力学特性評価を行うことを目指します。材料の力学特性の発現メカニズムの解明や応用に必要な性能を満たす材料設計指針の提案を行います。

JKA補助事業で行った「カーボンモノリスの力学特性」はこちら

​多孔質炭素の実験的力学特性の研究例: Geometric factors affecting Young's modulus of porous carbon with a three-dimensional network structure

「軽く、そして強い」 ラティス構造体
ラティス構造体

足し算で創る構造体の「力学特性支配因子」を見つける

材料の軽量化には,気泡を用いてバルク体に孔を開ける方法(=バルク体から引き算する)と,中空構造を用いて最初から軽い構造体を作る方法(=足し算)という2つのアプローチがあります。昨今の3Dプリンタ技術の発展により,様々な形状を持った構造物を容易に実現することが可能になりました。すなわち,足し算の中空構造の可能性が大いに広がりました。

​様々な幾何学構造を造形できることになったは喜ぶべきことと同時に,構造体を設計する上には「どの形を選べばよいのか」といった選択をする必要があります。我々は力学特性の評価と設計を繰り返し,幾何学構造パラメータと力学特性を紐付けることを目指しています。

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